台本

こちらでは、台本師「七梨」の書いた台本を貼っていきます。

週替わりで様々な台本を書きますのでよければ読んでください

南瓜の匂いに誘われて

シーン1 『雨音と南瓜(かぼちゃ)の匂い』

語「空の鉛色が月の光を遮り、降りしきる雨が山犬の遠吠えを遮る夜。仄暗い街の中を、ポーチを肩にかけた一人の幼い少女が駆け回っておりました」

カ「はぁ......はぁ......ッ」

語「少女は息を整え、傍(わき)に続く路地裏に視線を向けます。街灯も無く、一面常闇に染まった路地裏の中を、灰色の鍵尻尾が蠢き、黄金色の瞳が少女を見据えていました」

カ「......あっ」

カ「......見つけた。えへへ......こんな土砂降りの中外に居たら、風邪ひいちゃうよ? ......あれ。南瓜の、匂い?」

カ「あっ、待って!猫さ......きゃあっ!!」

語「足を踏み外した感覚......そして、一瞬の浮遊感。彼女は、たまらず目を瞑ります」

語「そして、路面を打ち付ける雨音と、夜と雨の冷たさは、少女の感覚から飛び去るように消えていきました」


シーン2 『夕陽の射し込む路地裏』

カ「う、ん......あれ?」

語「少女が目を覚ましたのは、夕陽の差し込む道幅の広い路地裏でした。建物の壁面に等間隔で掛けられたランプの灯火(ともしび)が、オレンジ色に路地全体を照らします」

カ「ここ......さっきの道じゃない、よね。知らない場所......どこ?」

カ「あっ、さっきの猫さん!待って......!」

語り手「路地裏を道なりに駆け抜ける猫と少女。雨の降っていない路地裏は、乾いた靴音を辺りに響かせます」

カ「はぁ......はぁ......ッあれ?」

カ「人の、声......?」

シーン7『往来に佇む語り好き』

語「アリクイ兄弟の店を後にしたカルーアとルシェルシェは、街の中心へ向けてアーケード街を練り歩いておりました。 二人のすぐ隣を、人力車が通り過ぎてゆきます」

カ「アリクイさんから貰ったお菓子、とっても美味しそう。 えへへ......」

ル「あぁ、言い忘れるところだった。 この世界を出るまでは、絶対に何も口にしちゃいけないよ。 元の世界へ戻れなくなってしまうからね」

カ「えっ?」

ル「まぁ......お家に帰ってからなら食べても大丈夫だから、お楽しみとして持っておくといいよ。 丁度ポーチを持っているようだし」

カ「わかった......あっ! あそこ、道が開けてる」

ル「ふぅ、やっと着いたね。 ここがこの街の中心だよ。 "中心街"とか"セントラル"だとかで呼ばれている」

カ「人がいっぱい......」

ル「ここはいつも、こんな感じさ。 特に......今日みたいな日は、ね」

カ「ふぅん......あれ? あそこの噴水に居る人は誰?」

ル「あぁ、あれはマーメイドだね。 割とメジャーな子だけれど、絵本で見たことがなかったかな?」

カ「えっと、人魚さんじゃなくて、噴水の後ろの......」

ル「噴水の後ろ?」

語「カルーアはルシェルシェの袖口を引っ張りながら、噴水の裏手へと回りました。 そこに腰掛けて座っていたのは、黒いローブに身を包んだ猫耳の......って、あれ? それって僕の事じゃないか」

カ「うん、貴方。 貴方はだあれ? 何だかお話ししたことがあるような気がするけど......」

語「僕は語り部さ。 君と話した事は一度もないが、君の事は"シーン1"の時から知ってるよ」

カ「シーン、1......?」

語「この世界の裏方にしか分からない事さ、気にしなくていいよ。 それで......君達は、何をしに此処まで来たのかな?」

カ「私達は、お菓子を貰ってまわっているの。語り部さんは、噴水の前で何をしているの?」

語「ふふ、僕は語り部だからね。今日は、此処で君達の物語を語っているのさ」

カ「私達の? 誰に語ってるの?」

語「誰かにさ」

カ「それが貴方のお仕事なの?」

語「お金を貰っているわけじゃないから、仕事ではないかなぁ」

カ「なら、どうして続けるの?」

語「それが楽しいからさ。 君はいつも、お金が貰えるから絵本を読んでいるのかい?」

カ「いや......楽しいから、読んでる」

語「うん、そうだよね。 僕にとって"語ること"とは、君にとっての"絵本を読むこと"と同等なのさ......お嬢さんが今、一番やりたい事は何だい?」

カ「一番、やりたい事?」

語「まぁ、今すぐに決めろとは言わないさ。 何でそんなことを僕が勧めるのかというとね......人生は"自分はどうしたいのか"を常に考えながら生きる方が、もっと楽しく、もっと深くまで味わえるように出来ているからだよ。 もちろん今僕が一番やりたい事は、君達二人の物語を語ることさ」

カ「ちょっと、難しいお話かも」

カ「でも、楽しく生きる方法なんだってことは、分かる」

語「うんうん、伝わったようで何よりだ」

語「......さて! 君達の物語の続きを語るには、君達自身が先に進まないといけない。 次は......そうだなぁ。 ここを右に出た先に並んでいる住宅地に行ってみるのはどうかな? あの辺りはお菓子を用意してくれている家が多いかもしれない」

カ「お菓子......あ、そうだった。 語り部さんっ、TRICKorTREAT!」

語「ふふっ、その台詞を待っていたよ。 実はさっき、君達が中心街まで来る前にお菓子を買っておいたんだ。そこの包帯くんやアリクイみたいに、空を飛ぶのは御免だからね」

カ「......? 何でその事を知ってるの?」

語「言っただろう? 僕はシーン1の時から君を知っているのさ。 さぁ、早くお行き! ハロウィンの夜はあっという間だ」


次回!4月30日にシーン8を載せます!